日本将棋連盟の『天才棋士降臨・藤井聡太 炎の7番勝負と連勝記録の衝撃』には、炎の7番勝負第1局~7局までの藤井聡太4段の自戦記が収録されていた。
恥ずかしながら藤井フィーバーによる<にわかファン>だから、その時まで将棋の世界にそんなもの(自戦記)があるなんて知らなかった。(((^^;)
本書の炎の7番勝負の最終局:第7局の羽生善治3冠(当時)戦の藤井聡太4段の自戦記「幸運な勝利」は、『将棋世界』2017年6月号にすでに掲載されたものの転載だというが、14歳(当時)が書いた文章には思えない、簡潔で押さえの効いた冷静な文体で驚いた。
書いてある将棋の内容はわからないから、体験記として読んだが、とにかくその文章力がすごいと感じた。そして大人びている。とても14歳とは思えない。
炎の7番勝負第1局~6局までの自戦記も、とても興味深い。
対局相手との思い出話を交えながら、当時の心境を語っている。
第1局では「全敗してもおかしくないと思っていた7番勝負だが、最初に1勝できてほっとした。」
第3局では「最初の2戦は1勝1敗で終え、翌日の第3戦と第4戦を迎えることになった。連敗するとあとが苦しくなるので、この第3戦が大事だと思っていた。」「連敗を避けることができたし、1勝2敗になるのと2勝1敗になるのとでは全く気分が違う。この2勝目でかなり気持ちが楽になった。」
第4局では「2日間、4局の戦いで3勝1敗。まさに、上出来である。特に、3段時代の対戦で力の差を見せつけられた中村6段に勝てたことは大きな自信になった。残る3人はA級の先生ばかり。あとは思い切ってやるだけだ。」
第6局では「第5戦目にして勝ち越しが決まり、勝敗のことはもう何も考えなくてよくなった。相手はすごい先生ばかりだし、勝っても負けても自分の将棋を指せばよい。」「本局は自分でもびっくりするぐらいうまく指すことができた。どのような成績で最終戦を迎えるのか不安もあったが、これなら最終戦も胸を張って指すことができると思った。」
そして最終戦(第7局)の羽生善治3冠戦では「廻しに手が届かず負けることがないよう、積極的に指そうと思って臨んだ。」と語っている。
こちらもしっかりした文章だが、「困ってしまう」とか「苦しいながらも大変だった」「どうやら勝負あった感じ」「内容としてはイマイチという気がしました」「何となく優勝したんだなあという気持ちになりました」など中学生らしい表現がみられる。
この自戦記で当時の羽生4段が「望外の好転」と書いていて、2017年は将棋世界の謙遜用語がいちやく世に知らしめられた1年ではなかったかと思った。(((^^;)