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上の話は、教会でよく聞く話です。
私自身は、先週、偶然にもお二方からご教示いただいたのが初めてでしたが、
聞いたその時は「なるほど!そうだったのか!」と妙に感激しました。
しかし、帰宅して、冷静になってみると、
斜線部は言語学的にはおかしいということに気がつきました。
辞書(研究社:新英和大辞典)の「history」の項には、次のように書かれています。
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ME,L histori-(a) ,Gk historía knowledge gained by inquiry ,historical narrative, f.hísor knowing ,wise:cf.story
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この語の出現は、Middle English(1100~1500)まで遡ることができる。
ラテン語のhistori-(a) か、ギリシア語のhistoría「調査によって加えられた知識」の意 が変化した語だということです。
言語学的には、英語と兄弟のようなドイツ語や親戚のようなフランス語・スペイン語などで、「歴史」に当たる語を調べると、次のようになって、共通の祖語から変化した語であることがわかります。
ドイツ語:Historie フランス語:histoire スペイン語:historia
英語以外のこれらの語でも、同じように「彼の」+「物語」のような語源説明はできません。
一般に、his+story→history説は、いわゆる民間語源(実際の言語学的論拠があるわけではなく、大衆の間で誤って推定され信じられるようになった語源のこと。語呂合わせに近いものが多い)に属するものだと言われています。
私は、「古今東西、すべての歴史は、神が支配しておられます」ということは、
クリスチャンとして、心の底から「アーメン」です。何の疑いも持っていません。
けれども、his+story→history説が生まれた心理的背景は十分理解できますが、
傍証として、his+story→history説を持ち出すのはおかしいのではないかと思いました。
そこで、牧師先生に電話する必要があった折に、この件について質問してみました。
そうすると、牧師先生も教会の説教で何回もそう言っているし、宣教師も言っていると言われ、
私が言った説は真実か?と聞かれました。
私は、「真実がどうかはわかりません。しかし、現在の学問的成果からはこのように言えると思います。」と答えました。
すると、「そうでしょう。真実ではありませんね。しかし、his+story説は霊的に正しいのですよ。」と言われました。
私はこの「霊的に正しい」を持ち出されると、もう何ともいえなくなります。
進化論と創造論の疑問に対しても、牧師先生の答えは、最後はここに帰着するような気がします。ですから、いつもかみ合いません。
私は、自分が聖書を霊的に読んでいないのではないかという畏れは常々持っています。
しかし、どうして「あなたは霊的に正しくない」と簡単に言い切れるのか、
それがわからないのです。
現実に暮らしている世界での学問的成果が頭ごなしに無視されているようで、
それなら何のために学問しているのか、よくわからなくなります。
クリスチャンは、教会へ行ったときと現実の世界で暮らすときとは、
頭の中を切り替えなければやっていけないのではないかと不安になってくるのです。