最近の「DNAハイブリダイゼーション」という新しい技術を使って、「人類」と、人類に最も近縁なすべての種、すなわち、チンパンジー2種(コモンチンパンジーとピグミーチンパンジー)とゴリラ、オランウータン、テナガザル2種の「類人猿」と、さらに7種類の「旧世界ザル」のDNAを分析すれば、以下の通りになるという。
この結果は、従来の解剖学から推測される種間関係がすでに納得のいくものであり、DNAから得られた結論は解剖学者の結論を再認識するものだったが、解剖学が解決できなかったことをも、DNAは解決することができた、と彼は述べる。
それは、ヒト・ゴリラ・チンパンジーの間の関係で、チンパンジーとヒトとのDNAの違いはおよそ1.6%で、ゴリラはヒトとも、チンパンジーともDNAが2.3%異なるので、ヒトにとってはゴリラではなく、チンパンジーがもっとも近縁な動物と言えるが、このことは言い替えるとチンパンジーにもっとも近縁な動物はゴリラではなくて人類だということなのです。
チンパンジーを私たちヒトから隔てている遺伝的距離(DNAの相違1.6%)は、2種のチンパンジー(ピグミーチンパンジーとコモンチンパンジー)どうしの遺伝的距離(DNAの相違0.7%)のたかだか2倍でしかなく、2種のテナガザルどうしの遺伝的距離(DNAの相違2.2%)やアカメモズモドキとメジロモズモドキのような近縁な鳥どうしの間の遺伝的距離(DNAの相違2.9%)よりも近いのです。
私たちヒトのDNAのうち、98.4%は普通のチンパンジーのDNAそのものなわけですから、私たちヒトは3番目のチンパンジーとも言えるのだと、彼は言う。
さらに、「DNA時計」という最新の物差しを使えば、人類の進化の年代は次のように推測できると言う。
1. ゴリラが私たち3種のチンパンジー(ヒトとチンパンジー2種)の共通祖先と分かれたのは、今からおよそ900万年前。
2. ヒトと「ヒト以外のチンパンジー」の系統とは、今から600万年~800万年前に分かれた。
3. 2種のチンパンジーが分かれたのは、今からおよそ300万年前。
このことは何を意味するかと言えば、かつて古生物学者たちが推定していたのとは違って、人類が独自の種として他の類人猿から分かれてから、まだほんの浅い歴史しか持っていないことを意味する、と言う。
そこで、このような研究結果をもちいて、客観的に動物界における階層的な分類を試みるならば、ヒトは独自の科を形成しておらず、独自の属さえも形成していないのであって、チンパンジーと同じ属に入っている、とも言える、と。
これが、現代における創世記―3種のチンパンジーの物語―。